……というのを調べるにあたり,楽をしようと関西大学の図書館に参考調査を依頼した。関大は国会図書館にも依頼してくれたのだが,「データは見当たらない」という回答であった。
レファレンス事例詳細:日本国内で、1980年代のパーソナル・コンピュータに搭載されていたDOSについて、その種類やシェアを知りたい。
ところが,ふと「もしかしたら」と思って自室の書棚を漁ったら,手がかりになる情報が見つかった。「手持ちの資料ぐらい精査しろ」というお叱りは甘んじて受けるとして,見つけづらい情報である割には,興味を持つ人もいるだろうと思い,資料を紹介する。
どこに手がかりとなる情報があったかというと,『日経パソコン』誌である。私が複写した範囲は1983年から1986年までだが,年に一度ソフトウェアメーカーに対してアンケート調査を行っており,その質問項目に「どのOS(どのパソコン機種)でソフトウェアを開発しているか」というものがあるため,これが手がかりとなる。
『日経パソコン』1984.9.24号のp.196によれば,日本のソフトウェアメーカーの49.7%がMS-DOSとCP/Mを対象にソフトウェアを開発している。これは複数回答可の設問で,450社中214社が回答した結果である(p.189)。翌年の『日経パソコン』1985.12.9号のp.192だと,MS-DOSの割合が68.5%に増え,CP/Mは36.0%に減る。これも複数回答可の設問で,993社中383社が回答した結果である(p.182)。『日経パソコン』1986年12月1日号では,質問項目が「ソフト適用機種」に変わり,どのパソコン機種で最も多くソフトウェアを開発しているかを問う内容に変化している(p.212)。第1位に来ているのは,もちろんと言うべきか,日本電気のPC-9800シリーズである。
(2021/8/13追記)ただし,『日経パソコン』誌の調査は,CP/M-80とCP/M-86を区別していない点に注意が必要である。
念のため言っておくが,『日経パソコン』の調査が絶対的に正しいと主張しているのではない。雑誌の編集方針というバイアスが掛かった結果には違いない。ただ,出版物は,有力な証拠になりうる。
なお,関西大学と国会図書館の回答を見た印象では,「1990年代の日本のパソコンのOSのシェア」であれば,もう少し情報が手に入るのではないかと思う。
(2021/3/1追記)たとえば,電通総研の『情報メディア白書1996年度版』のp.102には,1992年上半期から1994年下半期までの日本のパソコンのOSのシェアが出ている。これは(社)日本パーソナルコンピュータ協会『’94パソコンソフトウェアの市場動向調査報告書』のデータである。
それで,何故この記事をWWWに放流するかというと,国会図書館より調査力があるという自慢(?)ではなく,1980年代はもう既に忘れられつつある,という話である。