近畿大学「思考の技術」2020年前期講義録(上)

近畿大学全体の方針により,GoogleClassroom(以下,GC)とZoomを組み合わせた遠隔授業になった。前年度に引き続き,文芸学部と法学部の授業を担当した。なお,基本的に文芸学部と法学部とで同じ教科書・同じレジュメを使用している。

5月12日(第1回)

イントロダクション回であり,内容は2019年度第1回に準ずる。ただし小レポートを廃止して,準備ワークの二題「論理という言葉のイメージを書け」「雨が降っている時に外出するのに、傘を持っていかなくてよい理由を考えよ」を,グループ討論の場として,授業後にGCの機能で提出させた。

法学部は履修者人数が少ないため,授業者が司会となって,討論を進めた。

ブレイクアウトルームの発言順は「名前の五十音順」など,わかりやすい基準で学生に周知徹底した方がよい。また,マイクを使えない・使いたくない学生に対する配慮として,時間は長めに取った方がよい。

マイクのアイコンがわかりづらいと思ったため,「マイクがミュートの時のアイコン表示」「マイクが使える時のアイコン表示」をスクリーンショットしておき,スライドで説明した。

5月19日(第2回)

内容は2019年第2回に準ずる。小レポート課題としていた反対派・賛成派の共通点は,授業中にしゃべってしまった。討論のテーマは「反対派・賛成派の意見で妥当である点,妥当でない点を検討せよ」。

採用している教科書『科学技術をよく考える』は,テキストの内容を事前に読んでおき,教室でディベートする,という使用法が想定されている。
この授業においては,2018年から一貫して「教室で制限時間以内にテキストを読み,レジュメにある読解問題に答えさせる」という形で授業を実施している。
読解問題の答えについては,2019年後期から学生を指名して答えさせてから,答え合わせをしている。机間巡視ができないと学生の指名は難しいため,今期は法学部のみ実施している。

文芸学部では討論の時間が5分では足らないという苦情が出た。7~8分は必要である。また,グループ番号を指定して結果を発表してもらうのだが,これもあらかじめ授業者から書記(発表役)を指定した方がよいと感じた。履修者人数の多さゆえに,Zoomの入室などにも時間が掛かり,文芸学部は時間が不足しがちなのに注意したい。

法学部は比較的時間に余裕があるため,読解問題の答え合わせをしたり,討論の前に考える猶予を置いたりできた。

5月26日(第3回)

内容は2019年第3回に準ずる。授業内小レポート課題を討論のテーマにした。文芸学部は8分のブレイクアウトルームを作成。討論が終わってしまったグループが先に解散することがあるが,状況を鑑みて許可することにした。(見ず知らずの者同士で話すこともなくブレイクアウトルームを維持するのは疲れるだろう)
クラウドレコーディングは正常に行われない場合があるので,次回からローカルレコーディングにすることにした。
入室を許可しているのに,配信に入れない学生が出た。原因は,ZoomのAndroidスマートフォン版のバグであると思われる……という情報は,関西大学のヘルプデスクから得たのだが。何にせよ,情報収集を怠らないことである。

6月2日(第4回)

内容は2019年第4回に準ずる。討論のテーマは「賛成派の納得できる点」「反対派の納得できる点」「果たして反対派は賛成派を説得できるだろうか」の3点を与えた。最後の問題については「無理だろう」という意見が多数を占めるのは例年通りなのだが,反対派の心理学的な説明に合理性を認める学生も多いので,うまく言語化はできないが,私はギャップを感じる。
教科書が届いていない学生がいた。今学期においては学生の非ではないので,入念にチェックすべきであった。
またGCの「テスト付課題」のフォームを毎回作成しているのが地味に手間なのだが,後からやり方を変えるわけにもいかず,そのままである。

6月9日(第5回)

内容は2019年第5回に準ずる。授業内小レポートの講評と出題を削減した分だけ,前年度以前よりも授業時間に余裕があるが,ちょうどよい進行になってきた。授業者の立場として,血液型性格判断を全肯定できないが,さりとて東アジア圏では,干支や星座のように馴染み深い話題でもあることは確かであり,授業最後の締めくくりには気を遣った。私に言わせれば,血液型性格判断の話題には「間違った信念を抱いている人間と,上手なコミュニケーションをするには何をすればよいか」という問題が残されている。

6月16日(第6回)

内容は2019年第8回に準ずる。動物実験反対派をすべて読み,納得できる点と納得できない点を問うた。授業後に動画を確認した際,スライドが映し出されていなかった事故に気づいた以外は,例年通りの進行で,特に問題はなかった。
学生から「討論について考える時間を与えて欲しい」という要望が出た。特に今回のテーマには必要だろうが,時間管理が難しい。
受講生が少ない法学部では,私も討論に参加した。以前に授業アンケートで「講師の意見も聞きたかった」と言われた気がする。実は敢えてあいまいにしていた部分なのだが,授業最終週は中間レポートのリフレクション回で時間に余裕があるので,授業で扱ったテーマについて私の意見を述べてもよいかもしれない。

6月23日(第7回)

内容は2019年第9回に準ずる。動物実験賛成派をすべて読み,納得できる点と納得できない点を問うた。時間が不足しやすいので,私が話しすぎているおそれがある。また,権利に関する議論を取り扱っているので,法学部で授業をするのにとても気を遣う。
今期から始めた中間レポートは,「喫煙を認めるか否か」「血液型性格判断」「動物実験の是非」のどれかを選択して,自分が賛同できる立場について述べること……というので,ここまでが授業の折り返し地点である。